予防接種が怖い女子中学生

インフルエンザの予防接種を打ちに来た女子中学生。

うちの外来に来たのは初めてだったのですが、この子が注射を異常に怖がったんです。

誰でも注射は嫌いだと思います。小さな子供が怖がって泣き叫ぶのはよくあることですが、大きくなると少しずつ我慢することを覚えていくものですよね。

でも、この中学生はまず診察室に入るまでにも時間がかかり、母親に引きずられるようにして入ってきました。

そんな様子を見て、大丈夫なのかなと思いながら準備をしていたのですが、いざ先生が接種前の消毒をしようとしたらいきなり診察室を飛び出して待合室まで走って行ってしまいました。
母親が慌てて追いかけてなんとかなだめ再び診察室に連れられて来ました。

今度は大丈夫、絶対頑張れるからと本人が言うので再度注射の準備を始めました。

しかし、また先生が消毒のため腕を固定しようとすると突然大きな声を出して暴れだしました。

これでは危険だからと母親に日を改めて来院するようにと話したのですが、母親は自分が説得するのでどうしても接種してほしいと言います。

それで仕方なく点滴用ベットで少し休んでもらい、精神安定剤を飲んで落ち着いたところで何とか予防接種をすることができました。

結局この中学生が実際に注射が打てたのは、最初に診察室に入ってから1時間半もたってからでした。
翌日、その子の父親が謝りに来られました。

父親の話では、どこの病院でも予防接種の時にひどく暴れるので今迄行った病院ではどこも拒否されてしまって困っていたそうです。

よほどの注射恐怖症なのか不安症なのかわかりませんが、予防接種でこんなに怖がった中学生は初めて見ました。

戴帽式の思い出

十数年前からナースキャップを廃止する病院が多くなって、今ではほとんど見ることができなくなったナースキャップ。

このナースキャップ、看護学校に入るとすぐにもらえるわけではないのです。

一般の人には馴染みがないかもしれませんが、看護学校に入って半年くらいして戴帽式というものがあり、そこで初めてナースキャップをかぶせてもらえます。

それまでにも病院に実習に行くことはありますが、その時は給食当番のような三角巾を頭にかぶって実習をします。いかにも学生さんって感じですね。

私は看護学校に入るまで戴帽式のことをほとんど知りませんでしたが、式があまりにも神聖なもので正直驚きました。
校長先生からろうそくの火を授けてもらい、一人ずつナースキャップをかぶせてもらってみんなでナイチンゲール誓詞を唱え、誓いの言葉を捧げます。

式には学生の保護者、卒業した高校の先生などが呼ばれ、照明を落としうす暗くした会場の中で手に持ったろうそくの火が幻想的でとても感動的なものでした。
参加した母もとても感激していました。

戴帽式をしてキャップをもらって初めて自分が看護師になる第一歩が始まったんだな、という実感がわきました。
真新しいナースキャップを誇らしげにかぶった写真は今でも大切にしてます。

ナースキャップをほとんどかぶらない今でも、戴帽式は儀式として残っているようですね。

看護学生には節目の式としてずっと残してほしいです。

戴帽式で感じた看護師の基本理念や責任の重さをいつまでも忘れないで看護師として仕事をしていこうと思います。

助産師さんから聞いた話

看護学校の同級生の中には進学して助産師になった人も何人かいます。

彼女たちから聞いたのですが、お産の時に一番騒いで面倒なのは看護師と女医さんらしいです。

何となくわかるような気はします。

看護師や女医さんは医療従事者としてお産に関わってきたから、今どんなことされてるのか、これからどんなことされるのか全部分かっちゃってるから怖いんですよね、きっと。

普通妊婦さんはお産の時、陣痛でそれどころじゃないし陣痛の中で医師や助産師にどんなことされてるのかって分かってないですもんね。

分かっているから恐怖があるって感覚分かりますね。
だから、看護師や女医さんがお産するときは、痛くないように最初から無痛分娩を希望したり、お産の最中に早く何々をしてくれだとか、もうこれ以上無理だから帝王切開をしてくれとかとにかく文句が多いそうです。

彼女たちも最初は遠慮がちに言っているそうですが、だんだんお産が進んで痛みが強くなってくると余裕がなくなって言葉もきつくなってくるようです。

普通の妊婦さんでも同じようなことを言ってくる人はいるそうですが、やっぱりどこか違うそうです。
産婦人科がある病院に勤めている人は自分の勤務している病院でお産することが多いですよね。

勝手知った病院だからこそわがままを言ってしまうんでしょうかね。

確かにお産の痛みは誰かに助けてもらいたいと思うのは分かりますが、同じ病院で働く看護師や助産師に迷惑をかけるのはちょっと考えものですね。

準夜勤の前のプール

総合病院に勤めていた頃、当時3交代勤務をしていました。
日勤は9時~17時、準夜勤は17時~翌日1時、深夜勤は1時~9時という勤務体制でした。

ある日の準夜勤のこと。

一緒に勤務する、小学生の二人の男の子を持つ先輩看護師が気怠そうに仕事前に休憩室に入ってきました。

疲れている様子だったのでどうしたのかと聞くと、朝から子供たちとプールに行ってそのまま出勤してきたとのこと。

夏休みだったので、子供たちをスライダーがいくつもある大きなプールに連れて行くと約束していたらしいですが、旦那さんともなかなか休みが合わず、仕方なく準夜勤の前に行ってきたらしいのです。

それを聞いて当時は本当にびっくりしました。
準夜勤は確かに夕方からの仕事なので、昼間に用事を入れることもありますがさすがに若かった私たちもプールに行くことはしませんでした。

プールに行くと体がすごく疲れてぐったりしますよね。
でも、夏休みだし子供たちはプールに行きたいし、病院は日曜休みじゃないから会社勤めの旦那さんとの休みもなかなか合わないって分かりますけど、これ聞いたとき、働いてるお母さんってやっぱり大変だなって思ったことを今でもよく覚えています。
当時はまだ独身で気ままな寮生活だったので、結婚して子供を持って働き続けるには相当な覚悟がいるんだなと思いました。

私が勤めていたのは公立の病院だったので、身分は地方公務員で休みや福利厚生がしっかりしていたので育児休暇を取得して働き続けるママさん看護師さんはたくさんいました。
そんな中で、働くお母さんの大変さを痛感した出来事でした。

皮膚鉛筆の驚きの使い道

医療現場では皮膚鉛筆っていうのをよく使うのですが、皮膚鉛筆ってあまり一般には馴染みがないですよね。

色鉛筆の一種なのですが、芯がクレヨンのように柔らかく削って芯を出すのでなく紙巻き式になっていて芯がなくなったら巻いてある紙を破って芯を出すのです。

使い道は、皮膚にマーキングしたり、こすればすぐに消えるので器械の設定や数値などをプラスチックケースに書いたりに使っていました。

ある日の深夜勤のこと。

先輩看護師がいつものようにすっぴんで出勤してきました。
先輩は夜に出勤するときに化粧をすることを嫌って、いつも明け方にお化粧をする人でした。
その日もすっぴんのまま仕事をして、明け方5時頃にお化粧を始めました。

すると途中で先輩が「やだ、どうしよう。アイグロウ忘れちゃった。」と言い出しました。
見ると先輩は眉をきれいにカットしているので、アイブロウで眉を描かないと締まりのない顔になってしまいます。
先輩は私ともう一人の看護師に「アイブロウ持ってない?」と聞いてきましたが。私たちは出勤時にお化粧をしてきているので化粧道具なんて持っていません。
困った先輩はナースステーションの中を見回して。これでいいわ、と皮膚鉛筆を持ってきました。
そして、驚く私たちを全く気にすることもなく、なんと皮膚鉛筆で眉を描き始めたのです。
でも、そこはやっぱり化粧道具ではないただの皮膚鉛筆。
描いた眉を見てみたら、くっきり真っ黒の太い眉になってました。

先輩に、やっぱりちょっと変ですよ、って言ってみたのですが、眉がないよりましだとそのまま仕事を続けました。
朝になり、日勤者が出勤してくると皆先輩の顔を見て大笑い。
笑われるたび、仕方ないじゃない、と不機嫌そうにする先輩がとても可笑しかったです。

こんな風に皮膚鉛筆使った人っているのかな。